東京高等裁判所 昭和28年(行ナ)9号 判決 1955年1月27日
原告 金綱ゆき子
被告 特許庁長官
主文
原告の請求を棄却する。
訴訟費用は、原告の負担とする。
事実
第一請求の趣旨
原告訴訟代理人は、特許庁が昭和二十七年抗告審判第三九号事件について、昭和二十八年五月八日にした審決を取り消す。訴訟費用は、被告の負担とするとの判決を求めると申し立てた。
第二請求の原因
原告訴訟代理人は、請求の原因として、次のように述べた。
一、原告は、次の要旨からなる手織器の構造の実用新案について、昭和二十五年九月三十日登録出願をなし、(昭和二十五年実用新案登録願第一八四五一号事件)昭和二十六年七月二十三日訂正説明書を提出したところ、同年十二月十二日拒絶査定を受けたので、昭和二十七年一月十一日抗告審判の請求をしたが、(昭和二十七年抗告審判第三九号事件)特許庁は、昭和二十八年五月八日右抗告審判の請求は成り立たないとの審決をなし、その謄本は同月二十一日原告に送達せられた。
二、原告の右実用新案の要旨は、「枠体の四辺の対向する縦桁及び横桁に夫々一定の間隔をおいて、頭部に尨大部を具えた丸釘を対称的に固植し、その相対向する縦桁及び横桁の丸釘の頭部の尨大部に、各別に縦横相交叉させて糸条を懸止し、針棒で織成することができるようにしたことを特徴とする手織器の構造」である。
審決は、「方形枠に等径細桿から成る懸桿を方形状に等間隔を与えて列植した編物器」が、原査定引用の昭和十三年実用新案公告第一六七七四号公報(以下甲引用例という。)に記載せられ、また糸や紐を懸け渡すための懸桿の頭部を膨大にして、糸又は紐の抜脱を防ぐことは、原査定引用の大正十四年実用新案出願公告第二七二一二号公報(以下乙引用例という。)に記載されているので、甲引用例に記載された編物器が存在する場合、その糸懸細桿に代えて本願手織器のように、普通の丸釘のような頭を持つたものを使用するのに、格別考案を要するものとは認められないから、結局本願の実用新案は、甲引用例に記載された編物器と構造が類似であるとして、原告の出願は拒絶せられるべきものとした。
三、しかしながら審決は、次の点において違法であつて、取り消されなければならない。
(一) 仮りに審決に記載したような甲乙引用例が、本件出願以前国内に頒布されていたとしても、甲乙両引用例は、各別にその当時新規性を認められて、夫々出願公告されたものであるから、甲乙両引用例は互に類似しないものといわなければならない。してみれば、甲引用例の糸懸け細桿に代えて、本件実用新案の普通の丸釘のような頭を持つたものを使用すれば、最早本件実用新案と甲引用例とは類似しないものといわなければならない。
(二) 甲引用例は、「方形枠に等径細桿からなる懸桿を、等間隙を与えて方形状に列設し、かつ方形状態桿列の一頂点に近い枠の縁辺に切目を設けてなる編物器の構造」であつて、これと本件実用新案とを比較すると、
(イ) 前者は、編物器であるのに対し、後者は、手織器で、その間著るしい差異がある。
(ロ) 前者は、その構造上切目から編み初めなければならないが、後者では、各辺の角に植え込んである丸釘の尨大部に結ぶことができて、切目は不要であるから、前者に比し製作が非常に簡易で、使用が便利な上、操作中に織物及びその糸が脱落することがない。
(ハ) 前者は、頭部に尨大部を具えた丸釘を使用しないから、懸桿列から少し長い針桿を使用しなければならず、枠の大小で操作が変り、なお糸が不経済であるが、後者はどんな針桿でも使用でき、特にこれを製作する必要がなく、また枠の大小によつて操作は変らないし、糸が経済である。
右のとおり当業者から見れば、甲引用例と本件実用新案とは非常の差異があつて、全然類似しない。
(三) 乙引用例は、「懸糸頭を膨設した編杆を列設した数枚の編版の根部を挾板に貫設した溝内に互に連接するように嵌入して、着脱自在にその挾板に取り付けた主版と、頂端に彎曲方向に懸糸子を突設した彎曲編杆を列設した数多の編版の根部を、挾板における溝内に互に連接するように嵌挿し、着脱自在に挾板に取り付けた副版との組合からなる編物器の構造」であつて、これと本件実用新案とを比較すると、
(イ) 前者の要旨とする構造は、後者には全然欠除している。
(ロ) 前者は編器であるのに、後者は手織器である。
(ハ) 前者は、編器であるために、頂端に球の両側を削落して、扁平とした形状の懸糸頭を膨設した編杆を列設しているが、後者は、手織器であるために、頭部に尨大部を具えた丸釘を使用していて、両者は、その懸止桿の形状構造も全く相違している。
(ニ) 前者は、製作に当り懸止桿の加工が非常に複雑であり、また穿溝に手数が非常にかかるから高価となり、また木捻子を使用しなければならないが、後者にはこの欠点がない。
右のとおり乙引用例の編杆と、本件実用新案における丸釘とは、その形状及び構造を全然異にし、甲引用例の糸懸け細桿に、頭部に尨大部を具えた丸釘を代えることは、決して審決のいうように、特別考案を要しないとすべきものではない。いわんや両引用例は、次に述べるように、審決の摘録したものとは相違するにおいておや。
(四) 審決は、甲引用例は、「方形枠に等径細桿からなる懸桿を方形状に等間隔を与えて列植した構造」であると記載しているが、同引用例の公報には、「方形枠に等径細桿からなる懸桿を等間隔を与えて、方形状に列設し、かつ方形状懸桿列の一頂点に近い枠の縁辺に切目を設けてなる編物器の構造」と記載せられていて、審決は、その要旨とする構造を勝手に変改して認定している。
また審決は、乙引用例は、糸や紐を懸け渡すための懸桿の頭部を膨大にして、糸或は紐の抜脱を防止することだけが記載しているかのように解せられるが、同引用例の公報における説明書及び図面には、先に(三)において述べた編物器の構造が記載せられており、審決のような記載はない。
審決において、本願実用新案と、引用例とを比較するには、それぞれその公報の所載に立脚してこれを決すべきであるのに、審決は、これを看過して事実を認定した不当がある。
(五) しかのみならず、凡そ実用新案は、物品の形状、構造又はその組合せに係る実用的型を保護するものであるから、その新規であるかどうかは、ある刊行物に記載せられた一の実用新案、換言すれば、本件実用新案に、甲引用例が類似し、または、これから容易に実施することを得べき程度のものであれば格別、他の引用例乙をも併せて引用し、その新規性を論断すべきではないから、審決は、実用新案法第一条の規定を不当に拡張して適用した不当があるといわなければならないし、また被告主張の「実用新案分類公報」または、乙第三号ないし第八号証の如きものを引用して、本件実用新案の新規性を論ずることはできない。
(六) 本件実用新案の要旨は、先に二において詳細に述べたとおりであつて、登録せられるべき実用新案は、これを吾人の生活用具として実用に供すべきであるから、その使用するような構造を表示した前述の記載は、実用的型の表示として明確で、何等疑を容れる余地のないところである。しかるに審決は、原告の実用新案の要旨を、ほしいまゝに、「枠体の四辺の対向する縦桁及び横桁に夫々一定の間隔をおいて、頭部に膨大部を備えた丸釘を対称的に固植した手織器」と認定し、これを甲引用例と比較したのは、著明な本件実用新案の説明書に基かないで、その要旨を認定した不当があるばかりでなく、仮に右原告の表示を否認するならば、釈明権を行使させてこれを訂正させるべきであるのに、あえてこの挙に出でなかつたのは、審理不尽の違法があるものといわなければならない。
(七) 審決は、前記甲乙両引用例を、その説明書及び図面によつて手織用の器具と認定しているが、その説明書及び図面によれば、右両者はいずれも明らかに編物器であつて、手織器ではない。従つてこれと手織器である本件実用新案とを比較して類似であるとしたのは不当である。
(八) 本件実用新案は、前述の構造を要旨とするものであるから、その結果として、一辺に針棒を利用して糸条を懸け渡すことができるから、任意の大きさの織布を製造することができ、かつ、その針棒が確実に保持することができるから、その操作中離脱することがなく、なお構成至簡であり、また製作が容易で、著るしく安価であるが、引用例からは、この実用的効果は期待できない。従つて本件実用新案は、引用例とは要旨とする構造及び実用的効果を異にし、その当然の結果として、実用新案法の保護する実用的型を異にし、類似しないものとすべきである。
(九) 審決は、甲引用例には、枠に懸桿があり、また乙引用例には、懸糸頭を膨設したことから、本件実用新案が引用例から容易に実施できるものとされたかも知れないが、引用例は、いずれも織物器でなく、編物器であるばかりでなく、実用新案は、物品の形状構造又はその組合せにかかる型であるから、仮令構造の一部又は実用的効果が同一であるときでさえ、類似しないものとすべき観点からすれば、両者は、要旨とする構造及び実用的効果は勿論、実用的型を異にし、決して、実用新案法上微差に過ぎないものということはできない。
すなわち本件実用新案は、実用新案法第一条の要件を具備し、登録せられるべきものであつて、審決は違法といわなければならない。
第三被告の答弁
被告指定代理人は、主文同旨の判決を求め、原告の請求原因としての主張に対し、次のように述べた。
一、原告主張の請求原因一の事実及び特許庁が同二に記載したような審決をしたことは、これを認める。
二、同三の主張は、これを否認する。
(一) 審決は、甲引用例の図面及び説明書に記載された事項を、主たる引用例とし、本件実用新案は、これと比較して、糸懸細桿の頭部を膨大にした点が相違することを認めた上、その相違点は、手芸用具に常識的に行われていた事柄に過ぎないものとし、その一例として附加的に、乙引用例を引いたものに外ならない。なお特許庁備付の実用新案分類公報の「第八十三類十三手編具(但し旧分類)」によれば、大多数が頭部を膨大にして糸の抜脱を防ぐように形成せられ、むしろこれに反するものが稀である。審決は、このような周知かつ常識的なことがらを、甲引用例記載のものの糸懸桿に代えること、すなわち頭部を膨大にすることに何等の考案も要しないものと認めたもので、この認定は妥当なものである。原告代理人が主張するように、甲引用例と乙引用例とが、各別の出願公告になつたとか、考案要旨が相違するとかは、実用新案法第三条第二号によつて実用新案の新規性を論ずる上には、何等影響のないことである。
(二) 審決は、右に述べるように、甲乙両引用例の類否判断を審決の基本としたものではなく、引用公報の記載事項中必要な部分を判断の資料としたものである。従つて原告が、請求原因三の(二)、(三)、(四)において、甲及び乙引用例に記載せられた実用新案の考案要旨とする構造が、何れも本件実用新案の考案要旨とする構造と相違する旨を主張して審決を非難しているのは当らない。けだし、実用新案の新規性は、その登録出願前国内に頒布された刊行物に容易に実施し得べき程度において記載されたものでないか、又はこれと類似なものでないことを一要件とするもので、その刊行物が実用新案公報の場合には、その考案要旨のみの比較でなく、公報全体の記載事項を判断の資料となすべきは当然であるからである。
(三) 原告が提出した実用新案登録願に添付した説明書中「登録請求の範囲」の項に、原告が請求原因二の冒頭において、本件実用新案の要旨と主張する事項が記載せられていること、及び審決が、本件実用新案の考案要旨を、原告主張(六)のように認定した事実は、これを争わない。
しかしながら実用新案が構造に係る型の考案である以上、登録を請求する範囲が確定した構造に限定されるべきことは、実用新案法第一条に照して明かである。原告が考案要旨として記載した事項のうち、「その相対向する縦桁及び横桁の丸釘の頭部の膨大部に縦横相交叉させて糸条を懸止し、針棒で織成することができるようにしたことを特徴とする。」というのは、純然たる使用法であつて、登録実用新案として権利の保護を受ける対象とはならない。
(四) 甲引用例は、その説明書及び図面によれば、審決が説明しているように、織機であつて編物器ではない。そればかりでなく、本件実用新案の物品及び甲引用例に記載された物は、いずれも厳密な意味での織物及び編物の両者に使用し得るもので、学術上厳密な意味では、編物と織物とは明かに区別されているけれども、一般に手工的に織物を作る場合、「編む」という語が使われており、甲引用例に「手編器」とあるのも、この俗用語を用いたものに過ぎない。
(五) 本件実用新案と甲引用例記載のものとを比較すれば、引用例記載のものは、糸懸桿の頭部を膨大にしてないため、懸糸が外れ易いことは、原告主張のとおりであるが、このような効果を意図して同じ構造を採用することが、先に述べたとおり常識的なものである以上、本件実用新案におけるこの点に、何等考案力の要なく、むしろ、本件実用新案と甲引用例記載のものとの、この点の相違は、全体として構造上の微差と称すべきである。
第四証拠<省略>
理由
一、原告主張の請求原因一の事実及び特許庁が、その抗告審判において、同二のような審決をしたことは、当事者間に争がない。
二、よつて先ず、原告の出願にかかる実用新案の要旨を考察するに、その成立に争のない甲第一、二号証によれば、本件実用新案登録出願について、原告が昭和二十六年七月二十三日付で提出した訂正説明書の「登録請求の範囲」には、「図面に示すように、枠体(1)の四辺の対向する縦桁(2)(2)及び横桁(3)(3)に夫々一定の間隔をおいて、頭部に尨大部(4)を具えた丸釘(5)を、対称的に固植し、その相対向する縦桁(2)(2)及び横桁(3)(3)の丸釘(5)の頭部の尨大部(4)に、各別に縦横に相交叉させて糸条(6)を懸止し、針棒(7)で織成することができるようにしたことを特徴とする手織器の構造」と記載されていることを認めることができる。
しかしながら右甲第一号証(本件実用新案登録願)及び甲第二号証(訂正説明書)により、原告提出の説明書及び図面の全趣旨と、実用新案が物品に関し形状、構造又は組合せに係る実用ある新規の型について成立するものである事実とを総合して考察すれば、右訂正書に記載せられた事項のうち、後半における「その相対向する縦桁及び横桁の丸釘の頭部の尨大部に、各別に縦横に相交叉させて糸条を懸止し、針棒で織成することができるようにしたことを特徴とする」という文言は、後に認定する本件実用新案にかかる手織器の一般の使用法を記載したもので、本件実用新案の要旨は、審決のいうように、「枠体の四辺の対向する縦桁及び横桁に夫々一定の間隔をおいて、頭部に膨大部を具えた丸釘を対称的に固植した手織器の構造」にあるものと認定するのを相当とする。原告は、審決が、原告の実用新案の要旨を、前述のように認定したのを非難し、更に、審決は、釈明権を行使して、原告の実用新案の要旨を訂正せしめるべきであつたのに、これをなさしめなかつたのは、審理不尽の違法があると主張しているが、審決は、原告の訂正説明書における「登録請求の範囲」の記載に拘束されず、原告の提出にかかる説明書及び図面の全趣旨を、実用新案の本質に照らして判断し、その要旨を前述のように認定したものであつて、その間何等の違法も存しないばかりでなく、原告のいう訂正は、登録の前提として、出願公告をなすべきときにこれを行えば足り、登録すべき考案を包含しないものとした本件においては、これをしなければならないものとは解されないから、右原告の主張は、いずれもこれを採用することができない。
三、次にその成立に争のない乙第一、二号証によれば、審決が引用した甲引用例は、昭和十三年十一月一日に公告せられた昭和十三年実用新案出願公告第一六七七四号公報であつて、その登録請求の範囲の項には、「方形枠に等径細桿からなる懸桿を等間隔を与えて方形状に列設し、かつ方形状懸桿列の一頂点に近い枠の縁辺に切目を設けてなる編物器の構造」と記載せられており、また同乙引用例は、大正十五年七月八日に公告せられた大正十五年実用新案出願公告第二七二一二号公報であつて、その登録請求の範囲には、「懸糸頭を膨設した編杆を列設した数枚の編版の根部を挾板に貫設した溝内に互に連接するように嵌入して、着脱自在に該挾板に取りつけた主版と、頂点に彎曲方向に懸糸子を突設した彎曲編杆を列設した数多の編版の根部を、挾板における溝内に互に連接するように嵌挿し、着脱自在に挾板に取り付けた副版との組合せからなる編物器の構造」と記載せられていることが認められる。
四、しかしながら、審決は、当事者間に争のないように、右甲引用例は、「方形枠に等径細桿から成る懸桿を方形状に等間隔を与えて列植した構造」を有し、本件の実用新案に比較して、細桿の頭部が膨大になつている点だけで相違するものであるが、糸や紐を懸け渡すための懸桿の頭部を膨大にして、糸或は紐の抜脱を防ぐことは、本件出願以前から常識的に行われていたことであるとして、その公知の一例として、右乙引用例を引いているものであつて、甲または乙の引用例に記載せられた実用新案が、そのままに、本件の実用新案と類似するものとしたものでないのはもちろん、右甲乙の両引用例を併せて引用し、原告の実用新案の新規性を論断したものでもないから、請求原因三の(一)から(五)までのうち、これを前提とする主張は、採用することができない。
五、よつて審決自体に示された判断について考察するに、前記甲引用例には、右審決に引用せられたような記載があり、これと先に認定した原告の実用新案の要旨とを比較すれば、前者におけるいわゆる懸桿が、等径細桿であるのに対して、後者のそれが、頭部に膨大部を具えた丸釘である点において相違するものであることが認められる。原告は、前者は編物器であり、後者は手織器であるから、その間著るしい差異があると主張するが、右甲引用例は、その説明書及び図面、殊に使用法に関する説明及び図面第三図の製品から判断すれば、明瞭に、経糸と緯糸とを直角に交錯せしめて織布を製作するために使用する器具であることが認められるから、厳密な意味においては、これを手織器と称するを相当とし、この点において、両者は相違しないものといわなければならない。
六、次に前記乙引用例及びその成立に争のない乙第三、四、五号証を総合すれば、糸や紐を懸け渡すための懸桿の頭部を膨大にして、これによつて糸または紐が、作業の中途に抜け落ちることを防ぐことは、原告の本件出願以前から、しばしば行われ、この種手芸用具においては、常識的に採用せられていた手段であることが認められる。
して見れば、甲引用例と本件の実用新案との相違である、等径細桿を、頭部に膨大部を具えた丸釘に代えて使用することは、格別考案を要するものでないと認めなければならない。
七、原告は、なお本件の実用新案は、一辺に針棒を利用して糸条を懸け渡すことができるから任意の大きさの織布を製造することができ、かつ、その針棒が確実に保持することができるから、その操作中離脱することがないと主張するが、すでに甲引用例の存在する場合、これが糸懸け細桿の頭部を膨大としたものを使用することが、格別考案を要することなくしてなされる以上原告の主張するような実用的効果は、これについても期待することができるものといわなければならない。
八、以上の理由により、審決には、原告主張のような違法はないから、原告の本訴請求は、これを棄却し、訴訟費用の負担について、民事訴訟法第八十九条を適用して、主文のように判決した。
(裁判官 小堀保 原増司 高井常太郎)